2017年3月6日月曜日

米国企業はなぜ株主への利益分配に積極的となったのか -留保金課税から考える-

-留保金課税とは-
企業が得た当期純利益は使い道として,

1. 設備投資などの事業の拡大に使う.
2. 配当または自社株買いを行い株主に還元する.

の2通りありますが, このどちらにも使われずに, 主たる目的もなく事業の継続に必要とされる額以上の金額を内部留保として企業内にとどめた場合、最大 39.6% の重税を課すものです.



日本での議論
アベノミクスが始まって以来、企業の内部留保が積み上がり2017年1月において578兆円あるようです。


これに対して幾ばくかの税金を徴収し財源に充てる案が何度も議論に出ています。しかしながら経団連の猛烈な反発により今のところ具体的な話になっていません。確かに企業が過去に積み上げた内部留保は設備投資など現金化できないものに一部は変わっており,これらについての課税は難しいですし, 無用な混乱を招くと思うので反対です.
一方で私は当期純利益への課税には賛成です. なぜならこの課税には以下に示す効果が望めるからです.

1 企業から株主への富の移転機能
2 社会全体の富の再分配機能
3 最適な資本構成への誘導

一つ一つ見ていきます。

1 企業から株主への富の移転機能
留保金課税 (39.6%) と配当金への個人に対する課税 (20%) では圧倒的に配当金で払い出すほうが有利です. さらにこれを自社株買いで済ませれば, 税率は 0% です. 各期毎に適切に株主へ利益を分配するインセンティブが働きます.

2 社会全体への富の再分配機能
配当として受け取った個人は 20% の所得税をまず払い, 下記の 2 通りで消費します.

①消費に回す
②再投資に回す

①消費に回ればサービス業から製造業まであらゆる産業に広く波及し, 加えて消費税として納税します.
②再投資に回せば一部は他の産業の発展, 場合によっては新たな産業の勃興に寄与するかもしれません . このように広く富が社会に再分配されるわけです.

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3 最適な資本構成への誘導
事業の維持に必要な額以上の額を利益剰余金として積み上げる場合, そうするに足る合理的な理由を求められます. このため, 出来る限り利益は株主に払い出すインセンティブが生まれます. 利益の払い出しは利益剰余金の過剰な積み上げを防止するため, 結果として必要以上に純資産を積み上げなくなり, 常に最適な資本構成を維持することとなるのです.

-多額の現金を抱え経営効率化出来ない企業は買収対象になる-
過剰な内部留保は経営の効率を落とす原因になります. 現預金として過剰に積立を行い, 非効率な経営を行っている企業は, より効率的な経営を行っている企業の買収対象なります. 買収対象の株主は, より競争力の高い企業からの買収には喜んで合意するでしょう. こうしてより効率的な経営が行われている企業へと淘汰されてきたのが米国株市場なのです.

留保金課税は今の日本の様に国内の成長率が落ち, この状況を打開すべくもがいていた時代に生まれました. 法案成立当時、財政難だったアメリカ政府に対し、企業は得た利益を社会に還元せず (賃上げ、設備投資、配当に回さず) 多額の内部留保を積み上げていました. これが不況の原因という風潮が高まり本法案が成立することとなります. 個々の企業についての合理的な判断 (今回は不況時の資金繰りに向けた過剰な積立等) が全体の利益と一致するとは限らないのです. このような過剰な内部留保は, 配当金として払い出された際に支払うであろう, 個人の所得税の繰り延べとして判断されました. よって本課税は利益を適切に再分配しない企業に対する懲罰的課税の意味合いがあります.

こういった法律も, アメリカ的な株主還元重視の経営方針を育てる基盤になったのではと感じています.

-おまけ-日本企業の自社株買い状況

~みずほ総合研究所資料から著者作成~
日本国内の上場企業の自社株買いは およそ 4.7兆円で年々右肩上がりです. 日本企業も徐々に欧米と同じ目線の株主還元方針に変わっていけば, 日本株の未来も明るいのではと思います.

 -おまけ2-アメリカ企業の配当と自社株買いの総額です.




-SBI HP を参考に著者作成-
自社株買いの総額がおよそ45兆円です. 日本の10倍ですね. 圧巻です. こういうところにアメリカ株の魅力を感じます.
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