バフェット指数 (指標) と全世界時価総額合計額推移①

市場の過熱感を表すバフェット指数 (指標) ですが, 過去の推移や昨年の状況につては世界銀行 HP にて確認できます. バフェット指数なのか指標なのかはっきりしなかったので, 本記事ではバフェット指数 (指標) と併記して表現いたします.


①昨今の世界株指数の動きについておよび, ②各国市場の過熱感についてご質問を頂きましたので私なりにまとめてみました.

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株式市場時価総額 (MC) の推移

先ずは基本情報です.
全世界の株式市場時価総額 (Market Capitalization 以下 MC) の推移を以下に示します (期間: 1975-2016 年).


単位は ドルです. 世界銀行より

比較的大きな下落を示しているのは, 以下の出来事によります.


ブラックマンデーと平成バブル崩壊 (1987-1990 年)
11.479 Trillion → 9.568 Trillion (下落率 16.64%, 1989-1990 年)


IT バブル崩壊 (2000-2002 年)
34.260 Trillion → 22.788 Trillion (下落率 33.49%, 1999-2002 年)


サブプライム問題と金融危機 (2007-2008 年)
60.334 Trillion → 32.29 Trillion (下落率 46.48%, 2007-2008 )


ざっと過去 30 年の MC の推移を振り返ってみると 10 年に 1 回の頻度で株式市場の暴落があったことが分かります.

中でも 2008 年の金融危機は単年度で 46.5% 程度の下落を示し, 近年でも稀に見る大暴落であったことが分かります. 全世界の株式時価総額が 45% を超える下落を示したのですから, 個別株では 70-90% 程度の値下がりを示したものもあったことでしょう.


この時期には私も投資家としてある程度の額を市場に投じていましたからそれなりに資産の目減りを体感しました. 前年まで含み益ばかりだった持ち株の多くが一時的にも含み損へと変わったことを覚えています. 追加投資をする絶好の機会ではありましたが, 中々に厳しい投資環境でもありました.

株式市場を例えるならば, 乗り手を騙す賢さを備えたじゃじゃ馬です.


適切なリスク管理を怠ったり, 油断してポジションをとりすぎると有事の際には振り落とされてしまいますから, 節度ある投資を心掛ける必要があります. それが私の場合現金比率 15~20% を維持する事であったりするわけです.



さて, この様な市場環境にあっても生きながらえることができた背景には, 上記のリスク管理手法に加え, その後の株式市場の堅調さがあります. 未曽有といえる金融危機にあっても MC がマイナスを記録したのは 2008 年の単年度だけでありその後は順調に上昇を続けました. 若干の調整を伴いつつも 2013 年には 2007 年の MC (60.334 Trillion) を超えています. 2017年に入り, 今のところ大きな調整は起きていませんから現在もその状態が続いているとみていいでしょう (参考 2016 年, MC 64.82 Trillion).

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1987-1990 年の状況
さて, 少しばかり寄り道します.
1987-1990 年では日本の平成バブル崩壊が全世界 MC に影響を与えていたことを先ほどの MC 推移と共に示しました. 株式投資を始めたばかりの人, 私を含めた 30 代前半の人には感覚として薄いとおもいますが 1987-1989 年の 3 年間は日本の株式時価総額がドルベースで米国市場を追い抜いていました. こんな時代もあったのです.
日米の比較チャートを以下に示します.




世界銀行より


こちらのチャートの様に 1987-1989 年に米国市場が低迷する一方, 日本株は平成バブルの真っ只中にありました. ブラックマンデーによる暴落は日本市場にも波及しましたが, その影響は限定的であり 1987-1989 年までブラックマンデーを含む 3 年間上昇を続けました. この様に 1990 年に平成バブルが崩壊するまで日本経済, 株式市場は我が世の春を謳歌します.  
しかしその後の状況はご承知の通り, 四半世紀を超える長い低迷期をいまだに日本は続けています. (この失われた 25 年を迎えた原因とその後の流れについての考察はこちらの記事又は関連記事をご参照ください.)



余談ですが, 1987 年はブラックマンデーにより米国市場が崩壊した年と記録されていますが, このチャートではまるで何事も無かったかのように平坦にみえます. これは 1987 年中に S&P 500 が35% も上昇し, 同年に市場が崩壊したため, データの集計方法によっては急騰も暴落も無かったことになるからです. 世界銀行のデータ集計は年末の終値を基準に行われます. この方法ではまさにブラックマンデーが『無かったこと』になったわけです.


全世界 MC のバフェット指数 (指標)について.

過去起きた 3 度の株式市場の崩壊時バフェット指数 (指標) =MC/GDP×100 (%) はどのような値を示していたのでしょうか. 便利なことにこれも世界銀行のデータから検証できます.


こちらがその推移です (期間: 1975-2016 年).



暴落前年の全世界 MC のバフェット指数 (指標) はそれぞれ以下の通りです.


1989 年   72%
1999 年 120%
2007 年 114%


こちらのチャートの通り, バフェット指数 (指標) が 100 を超えるようになったのはここ 30 年以内の出来事であり, 米国株, 全世界 MC の場合には 1998 年以降になってからです. その時代背景によりバフェット指数 (指標) の適正値は変わってくると判断するのが適切かつ妥当です. そうは言ってもざっくりと株式市場の雰囲気をとらえるには今のところ有効な手段といえます.


上記チャートの通り, 過去この値が 100 を超えたまま長期間推移した例はありません. 世界恐慌直前に起きた 1929 年の株式市場崩壊時についての同指数の推移が気になるところですが, 調べても見つけられませんでした. 一方で, バフェット指数 (指標) と強い相関を示す事が知られている CAPE レシオ が 1929 年前後に急上昇していますから, バフェット指数 (指標) についても同様の傾向が表れていたものと推察しています.


さて, 現在の全世界 MC のバフェット指数 (指標) はというと 2016 年に既に 100 を超えています. 先の全世界 MC についてのコメントと同様に, 2017年に入り, 今のところ大きな調整は起きていませんから現在もその状態が続いているとみていいでしょう.


さて, これまでの説明で全体の状況が把握できました. 続いては各国の状況に注目してみましょう. 2007-2009 年の金融危機に着目し, 主要先進国, 新興国のバフェット指数 (指標) はどの様な動きをみせたのか, それぞれ見ていきます.
長くなったので続きます.

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関連記事です.
基本的に保守的な投資方針を採っています.

失われた 25 年が訪れた原因と日本の未来を労働市場の転換から考察しています. 

他にもいろんな記事を書いています. 詳細はダブ内を参照ください.

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