C/F (キャッシュ・フロー計算書)

C/F から分かることは会社のお金の流れです.
営業活動, 投資活動, 財務活動と大きく 3 つの項目に別れて表示されています.


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営業活動によるキャッシュフロー
その名の通り営業に関わるお金の流れを示した項目です.
実際の収支を示すため, 費用として計上されたけれども, 支払いを伴わない支出は足されます. 一方で利益として計上されたけれどもお金が入っていない場合には差し引かれます.


具体例.
足されるもの
減価償却費 (お金を実際に支払っているわけではないため)
減損損失 (上に同じ)


増加して差し引かれるもの
受取手形増加額 (売り上げたものの受取手形として手元にある為に現金化できていないため)
棚卸資産増加額 (増加した棚卸資産分だけ会社はお金を使っているため)
一方で, これら項目が減少した場合には, 現金化されて会社の手元にお金が残ったことになるため, その額が営業キャッシュフローに足し合わされます.


減少して差し引かれるもの
買掛金減少額 (買掛金の減少はお金を支払ったという事ですから, その支払い額分だけ会社からお金が流出したこととなるため) 未払い法人税減少額についても同様.
一方で, これら項目が増加した場合には支払いを先延ばししているため会社にお金が残ることに繋がり, 営業キャッシュフローに足し合わせられます.


営業活動に関係のない項目は差し引かれる.
営業活動に関係のない固定資産売却益などは, 投資活動によるキャッシュフローとなるため, 営業活動によるキャッシュフローからは差し引かれます.


営業活動によるキャッシュフローはプラスであることが基本
創業間もない会社で成長著しい企業の場合は, 売上の増加に比例して売掛金が増加しますし, 次に売るものを用意しなければなりませんから在庫も急増します. このため営業 CF がマイナスになることが多いです. この様に, その会社が置かれている状況によっては営業活動によるキャッシュフローがマイナスになることも十分にあります. しかし, 私が基本的に投資対象とするような 10数年の歴史がある企業の場合には営業活動によるキャッシュフローが常にプラスであることが投資先として選択する際の絶対条件です.


数期にわたり営業CFがマイナスの会社は潜在的に問題を抱えている可能性が高く, 投資対象として不適格です. 投資したいと思う会社がこの様な状況であった場合, その原因を調べて納得できれば投資へと踏み切りましょう. 原因が分からなければ, 分かるようになるまで投資は見送るのが無難です.


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売上高営業CFマージン
営業CF/売上高=売上高営業CFマージン


この値が高ければ高いほど, 売上を現金化する能力が高いことを示します. 一般的には 10% 以上あることが望ましいといえるらしいですが, 高ければ高いに越したことないですね.  ちなみに PM は丁度 10% 前後の 営業CFマージンとなっています. 一貫して高い営業CF マージンを持つ企業を見つけたら投資に値する企業であるかさらに詳しく調べましょう.


PM 2016 年のアニュアルレポートより売上高営業CFマージンを見てみます.


2016年通期 PM の売上高営業CFマージン(M は Millions)
$8,077M(営業CF)/$74,953M (売上高)= 10.8%(売上高営業CFマージン)


丁度 10% くらいですね.


当期純利益対営業CF比率
当期純利益/営業CF=当期純利益対営業CF比率(%)


.当期純利益と営業 CF の関係を示します. 営業 CF に占める当期純利益の割合が大きいほど稼ぐ力があるとみることができます. 


PM 2016 年のアニュアルレポートより当期純利益対営業CF比率を見てみます.


2016年通期 PM の当期純利益対営業CF比率
$7,250M(当期純利益)/$8,077M(営業CF)= 89.8%(当期純利益対営業CF比率)


営業CF の大半が当期利益によるものであることがわかりますね.


投資活動によるキャッシュフロー
有形無形に関わらず資産の売却, 取得に関するお金の流れがこちらに示されます. 長期, 短期投資証券や M&A に関する株式取得による支出や子会社売却による収入もこちらに示されます.


有形, 無形固定資産の取得は設備投資による支出である場合が多いです. この金額が減価償却費内なのかそれ以上なのかを確認しましょう. 設備の陳腐化により競争力を失うような産業の場合, 有形固定資産取得による支出が大きく, 営業キャッシュフローを食いつぶす会社も多々あります. こういった会社は労働者の働き口としてや, 作った製品 (中間品最終品問わず) が使われることで社会の発展に寄与する為有益であることは当然ですが, 投資家の発展には必ずしも貢献しないため, 私たちが投資先として選択するには不適格です. 半導体メーカーなどはこの様な例が多いと伺いますが, 又聞きなので関心を持った際には調べてみることにします.


通信業界も絶え間ない設備投資で他社に負けない通信速度とカバーエリアを確保する必要があります. この費用負担がかなりの重荷となりますから, 5G の基地局整備では国内通信大手が共同で設置するなどの話が出ていたりしましたね.


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フリーキャッシュフロー (FCF) を求める.
私たち投資家への還元策の原資となるのは FCF です. いかに営業キャッシュフローが多額であろうとも, 常に多額の設備投資が必要である場合には手元にお金が残りません. これでは企業は存続できてもその所有者である株主に益が回りません. そこで会社の手元にお金が残る体質になっているかを FCF を求めることで確かめます.


FCFの一般的な求め方
FCF=税引き後利益+減価償却費+運転資本の増減-企業が現状維持に必要なキャッシュフロー


他にもいくつか計算方法があるらしいですが, 一番単純だと私が思っているのは上記の式です. 企業が現状維持に必要なキャッシュフローは有形, 無形固定資産の取得額だと考えて差し支えありません. でも, 税引後利益+減価償却+運転資本の増減等を計算するものまた手間ですよね. 私たち投資家は会計士ではありませんから, ざっくりと企業の状況が分かればいいわけです. 以下の式で十分に用は果たせます.


FCF=営業CF ー 有形,無形固定資産の取得額


これで十分です.
この FCF が私たち投資家の富の源泉です.


2016年通期 PM の FCF
$8,077M(営業 CF)ー$ 1,172M (固定資産の取得)=$6,905M (FCF)


営業 CF の大半が株主に残ることが分かります.


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売上高FCFマージン
FCF/売上高=売上高営業CFマージン


企業が得る売上高の内, 投資家に何割残されているのか示したのが 売上高FCFマージンです. この値が高いほど売り上げたお金が社内に残り, 株主還元の原資として使えることになります.


2016年通期 PM の 売上高FCFマージン
$6,905M(FCF)/$74,953M (売上高)=9.2%(売上高FCFマージン)


財務キャッシュフロー
財務CF は借入金の増減や配当金の支払い, 自己株式の取得または新株の発行など, 資本, 財務に関わるお金の流れが記述されています. 特にいう事はありません. ザっと眺めて終了です.


貸借対照表, 損益計算書と合わせて眺めることが必要
キャッシュフロー計算書は会社のお金の流れを示しますが, その会社の持つ資産状況や規模はわかりませんし, 稼ぐ力が把握できるわけではありません. 売上高FCFマージンなどは損益計算書と共に見比べるから出せる数値です. 稼ぐ力を示す損益計算書と会社の資産状況を示す貸借対照表を合わせてみることでその会社の状況を掴んでいきましょう.

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関連記事です.
B/S (貸借対照表)

P/L (損益計算書)

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