各世帯の平均所得や貯蓄額, そして相対的貧困とは?前編

自分の置かれている状況って周りと比較してどうかなって思ったりしませんか?質問されると気になるもので, 現在日本家庭が置かれている一般的状況を見るには丁度良い機会だと思いましたのでまとめてみることにしました.

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基本データは厚労省国民生活基礎調査を基にしています.
ここで示される所得とは, 課税前の額面金額での給与その他所得の総額をいいます.

この統計で気を付けなければならないのは, 平均世帯人数が減る代わりに世帯数は上昇している点ですね. これは核家族化の進行により, 過去と比較して世帯年収の分化が起こっている可能性を示唆します. そのためこれら世帯の所得推移を過去と直接比較すると判断を誤りかねない問題があることは言及しておきます.  

(世帯年収の分化: 例えば祖父母, 父母, 子一人の世帯所得 1000 万円の子育て世帯 (世帯人数 5 名) があり, この一世帯が日本の全世帯だったとします. この子育て世帯が両親と別居することで, 子育世帯所得 700 万円 (世帯人数 3 名) と高齢者世帯所得 300 万円 (世帯人数 2 名) に分かれます. そしてこの 2 世帯で合計全体を割るため, 平均世帯所得は 1000 万円の半分である 500 万円となります. 世帯数が核家族化で増えたことにより, 全世帯所得含めてすべての平均値を引き下げることに繋がります.)
さて, 個々の家庭が採った最適化方法が世帯数が増得ることに繋がり, その結果として全体の非効率を生む, こんな構造的な問題も日本は抱えるわけですが, この効率化を求めて生じた非効率の結果として各世帯の所得が下がり, 彼らの生活が苦しくなっているというのもまた事実です. こういった背景も踏まえながら今回の統計を見ていきましょう.



各種世帯の平均所得金額推移



この所得ですが平成 6 年の 664.2 万円を最高値として下がり続けていました. しかし幸いにも平成 25 年の 528 万円を最下点として上向むき, 現在は 545.8 万円となっています. アベノミクスからの円安誘導による企業業績の改善が僅かながら賃金上昇に繋がっています. しかしながら平成 6 年の平均 664.2 万円と比べれば 120 万円も所得が減りその割合は同年比 18% 減です.

加えて, 社会保険料をはじめとした非消費支出の上昇や, 食料物価の上昇など基本的な生活を送るうえでの最低限の固定費は年々上昇を続けていますから所得金額の減少以上に日々の生活が苦しい感覚が実感としてあるのもうなずけます.


児童のいる世帯の平均所得は目を見張りますね. 我が家も子育て世帯ですが, 私一人の収入だけでは届かないですね. 幸い妻もフルタイムの職を持っていますから, そのおかげでかなり生活が支えられています. デキる妻あっての我が家です.

子育て世帯は働き盛りですし, 子供の学費積立て, 住宅ローン, 日々の生活費等で何より稼がなければやっていけません. ですから世帯平均で 700 万円程度の所得がむしろ必要とされるのでしょう. 皆さん頑張っていますね.

しかしこの層も盤石というわけではなく, 平成 8 年の 781.6 万円の最高値から 70 万円ほど減少しています. 全世帯の所得減少割合と比べれば幾分かはマシですが, それでも 10% 程度の減少を見せています. この失われた 10% については, 私たちの自助努力で補う必要があるわけです.

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ちなみに民主党政権時代に導入された子供手当 (現在は児童手当) はこの所得計算に含まれています. この児童手当の平均給付額は同報告書によると 14.1 万円です. もしも仮にこの手当が無かった場合には 690 万円台まで児童のいる世帯の平均所得が下落していた可能性が示唆されます. 現金ばらまきの是非は別として民主党が行った比較的マシな政策がこの手当でした.


データ参照元が総務省となりますが以下の様な統計もあります.


勤労世帯可処分所得と非消費支出推移


過去 10 年の平均所得, 可処分所得, 非消費支出 (所得税, 住民税, 厚生年金保険料など) の推移です. グラフの通り平均所得 (黄色) については緩やかな減少傾向が見て取れますが, 一方で社会保険料等については緩やかな上昇傾向にあるのが分かります (赤色). これは, 社会保険給付の自然増分を補うために厚生年金保険料の値上げを進めてきたからです. 今年で一旦この調整は完了し来年からの値上げは予定されておりません.


しかしその一方で, 基礎控除と給与所得控除の見直し議論が突如として現れてきましたから, ゆでガエルのように徐々に税負担が増えて行く可能性があります. 苦しい世の中になったものです.


再び厚労省データに戻ります.


所得の分布状況.


平均所得は文字通り平均で, 所得総額を世帯数で割った値です. こちらは先ほどのデータの通り 545.8 万円となっています. 一方で中央値ですがこちらは 428 万円です.


中央値とは
所得の低い世帯から順に並べて総世帯数の丁度半数となる値のことをいいます.


中央値と平均所得には 117 万円以上の大きな差がありますね. これは少数の高所得世帯が全体平均を引っ張り上げているからです. その結果, 図の通り平均所得金額以下の世帯は全体の 61.4% を占めるまでになっています.


中央値の方が人々の感覚に近い所得金額ですね. 本グラフによると世帯所得 300 万円以下が 33% を占めます. これは日本の全世帯の ⅓ が年間所得 300 万円以下で生活している実態があるということですね. その一方で 1000 万円を超える世帯は全体の 11% 程度存在します.


若干今回の話からずれますが, この所得 300 万円世帯の多くは高齢者世帯であり, そして日本の家庭金融資産の多くも高齢者に偏っています. それは彼らが自助努力によって老後の為に蓄えてきた成果であり素晴らしいことです.


しかし, 近年貯蓄から投資へと麻生太郎が叫ぶのとは裏腹に家庭金融資産は頑なに預貯金偏重の姿勢を崩しません. これはある面では当然のことでです.

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金融資産の多くを持つ高齢者世帯は所得が限られていますから, 既に貯蓄を切り崩して生活する立場となっています. その虎の子の預貯金をリスクをとって株式市場で運用しようとは思わないでしょう.

60-70 年という彼らの人生をかけて作り上げられてきたライフスタイルには貯蓄と保険積立はあるかもしれませんが, 積立投資はまず無いでしょう. しかも彼らの中にはバブル崩壊後の低迷する日本市場に苦い思い出を持つ人も少なからず居られるはずです. そういった経験を背景として持っていればなおさらでしょう.


麻生太郎の号令にもかかわらず, 投資額が一向に増えないのも当然の事であり,これをお上がいくら嘆いても仕方のないことなわけです.


さてその一方で, より不確実な未来を生きる事が決まっている我々は自助努力で年金に変わる仕組みを生み出さなければなりません. 来年度より制度運用が開始されるつみたて NISA などの積立投資制度は資産形成を必要とする私たちの様な世代にはうってつけの仕組みとなりますから, 確定拠出年金制度とも組み合わせてうまく使っていきましょう.


年代別平均所得金額

さて話を元に戻します. これらも平均ですから高所得世帯に引っ張られて全体的に上振れていることが推察されます.


世帯平均 545.8 万円以上を示すのは 30-59 歳の世帯ですね. 最も低いのは 29 歳以下世帯で 343 万円です. しかし, 一人当たり平均所得となるとまた違う順位が見えてきます. 最も一人当たり所得が少なくなるのは 30-39 歳の世帯なんですよね. これは子供を持つことによる世帯人数の増加と, 奥様又は旦那様が育児休業の取得や退職, 時短勤務により一人当たり収入が減少しやすいからです.

子育てには何かとお金がかかります. 保育園料も一般的に 4.5-6.5 万円/月 程度は必要です. 休業取得で収入は減り, 代わりに支出は増えますから DINKS 世帯もその先を見据えて, 子育てが始まる前にある程度の貯蓄をしておく必要がありますね.
ちなみに我が家の節約方法と資産管理はこちらを参照ください.

長くなったので続きます.

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